ピーナッツアレルギーが解決される日が近づいた!アメリカの臨床試験について
はじめに
現実に起きた悲しい出来事です。
重度のピーナッツアレルギーをもつ15歳の少女が、ボーイフレンドとのキスをしたあと、アナフィラキシーショックを起こし死亡したという事件が報道されたことがあります。ボーイフレンドはキスする前にピーナッツバターを食べていたことが後日判明しました。重度のピーナッツアレルギー患者は僅かなピーナッツでも命取りになる事がありますので、非常に注意して食生活を送る必要があります。
今回、ピーナッツアレルギーのお子さんを持たれる方々に朗報です。
Aimmun therapeutics社の第三相試験で4-17歳の患者でピーナッツアレルギーが改善したという臨床試験結果が発表されました。具体的に見ていきます。
【もくじ】
そもそも臨床試験とは
今回の試験はいわゆるフェーズ3試験と製薬メーカーでは呼ばれている段階です。
この試験で有効性が認められれば、厚生労働省(PMDA)に薬事申請し、医薬品として承認してもらうプロセスに移ります。
つまり、医薬品として妥当かを検討する最終試験となります。
因みに第三相試験というぐらいですから、第二相試験も実施されています。
小規模で実施し適切な薬の量とその効果を検討しています。
試験の内容と結果
薬(AR101)
AR101と呼ばれピーナッツ由来の経口薬です。ピーナッツ蛋白質換算で1日300㎎を目標維持量として脱感作法に用いるために開発されたものです。
試験方法
AR101を使った第三相試験は二重盲検試験(AR101と効果のない偽薬の2群で行う試験)をアメリカとヨーロッパで500名ほどのピーナッツアレルギーの患者(4-17歳)で実施しています。
結果
1日あたり、AR101を300㎎、6か月摂取できた患者について、実際にピーナッツ蛋白質600㎎相当(ピーナッツ2粒分)を食べてもらい、効果を判定しています。
AR101群では、アレルギー症状なしにピーナッツ蛋白質600㎎を食べられたのは67.2%、偽薬群では4%だったことから、AR101の効果が認められています。
下記の英語論文をみると、18歳~55歳の方々では優位な効果は見られませんが、
4歳~17歳では、明らかに偽薬に比べAR101を飲んだ患者でピーナッツアレルギーの改善が認められています。
論文はこちらです。
The new England journal of medicine
タイトル:AR101 Oral Immunotherapy for Peanut Allergy
られます。
さいごに
わずかピーナッツ2粒くらいを食べられるようになったにすぎませんが、薬でアレルギー反応が弱くなれば、その後の生活において、命が危険にさらされる確率は少なくなっていきます。
日本では各団体で同様に脱感作でのピーナッツアレルギー治療の検討を行っていますが、臨床試験として実施されたものは報告されていません。
尚、この試験は日本では実施されていないので、国内で恩恵を受けることはできません。主治医と相談し、販売後は個人輸入等で手に入れる事になりそうです。
それでも、これまでより一歩は前進した事はうれしいです。